春が来た。
名無しはやっぱり死ななかった。
そりゃそうだろう。
死ぬならとっくに死んでる筈だ。あれだけボロボロになっても生きてたんだから、
そう簡単に死ぬ筈がねぇ。
流石に冬の間はずっと寝た切りだったけど、ようやく元気になってくれた。
誠心誠意が篭った、オイラの看病のおかげだな。
名無しは元気になったし、春になったし。
オイラは飛丸と名無しと一緒に、異国へ行こうと思ってる。
名無しも悪かぁねぇって言ってるし。
名無しには命を救って貰ったし、すっかり世話になった。
看病したくらいで恩が返せるとは思っちゃいねぇ。
でも、オイラは銭なんて持ってねぇし。お宝(もどき)も割れちまったし。
色々、考えたんだけどさ。
これくらいしか、オイラが名無しにしてやれること、思い付かないし…。
だから。
………よいしょ。
………う。ふんどし、キツいな。 よいしょ、と。
……・・・。 ………ん、…ん。
うわっ!!
いきなり起きるから、びっくりするじゃねぇか!!
蹴るなよ、そんなみっともない格好で!!
あぁ!?
なんで逃げるんだ? 何で逃げんだよ、名無し!!
逃げること、ねぇだろ?
そんなに動くと、傷が開いちまうぞ? 大人しく寝てろってば!!
よし。そのまま動くなよ?
あぁ、もう! ちゃんと脚、開けってば!!
何するんだ…って。
男はこうしてやると喜ぶんだろ? オイラ、知ってるんだぜ~?
何でそんな事知ってるんだ…って。
オイラだって、生きてく為に色々大変だったんだ。
人買いに売られそうになったって、前に話したろ?
そんな目に遭ってりゃ、このくらいのことは身に付いてるに決まってんだろ。
仔太郎様を見くびって貰っちゃ困るぜ。
おい、逃げんなよ!
せっかく気持ち良くしてやるってのに、人の好意を踏みにじる気か!?
んん?
オイラに出来るのかって思ってんのかよ。馬鹿にすんな。
これでも結構、上手いんだぜ。
いいか、大人しくしてろよ。
でなきゃ、噛むぞ? 噛み千切るぞ!?
よし。そうやって最初から素直にしてりゃいいんだよ。
まったく、可愛気がねぇな。
あぁ?
オイラに言われたくねぇだと? 煩せぇな。
逃げるなってば!
欲しかねぇのかよ…、 欲しかねぇのかよっ!!
飛丸!
オイラが前をやるから、お前は後ろだ! いいな!
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さて。
恩も返したし、名無しもすっかり元気が戻ったみたいだし。
異国だ、異国だ!
楽しい世界目指して、出発だっ!!
つづくぞ。
ツッパって生きてくなら、読み書きくらいは出来なきゃな!
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